【インタビュー】難病を抱えながら動画編集で「フリーランス」を目指すWさん(20代)

札幌の就労継続支援事業所「ライフワーク」には、多種多様なバックグラウンドを持つ利用者さんたちが通っています。その中でも、2024年6月の開所直後から通い続けている動画編集部門のエース・Wさんです。

彼が、難病を発症し、どのようにして「フリーランスの動画編集者」という新たな夢を見つけたのか。その2年間にわたる歩みと、未来への決意を深く掘り下げました。

1. 体調の異変、そしてライフワークとの出会い

Katy

Wさんはライフワークの「超初期メンバー」だそうですね。
まずは、ここに来るまでの経緯を教えていただけますか。

Wさん

はい。僕は2024年6月、ライフワークがスタートしてまだ1ヶ月も経たない頃に入所しました。
当時は利用者も僕を含めて数人しかおらず、今の賑やかさが信じられないほど静かな事業所でしたね(笑)。

実は、ここに来る前は、接客業やCADを使った設計、そして工事現場の「現場監督」として働いていました。
でも、3~4年前から体に異変を感じるようになったんです。
最初は単なる「運動不足かな」と思っていました。
信号が変わりそうな時に走れなかったり、階段を上るのが妙に辛かったり。
でも、現場監督の研修中に決定的な出来事がありました。

Katy

現場監督の研修中、何があったのでしょうか

Wさん

工事現場の朝は、全員で屋上に集まってラジオ体操をするんです。
でも、僕は新人だからエレベーターを使うのが気まずくて、先輩たちと一緒に階段で4階まで上がろうとしました。
ところが、手すりにしがみつかないと一歩も上がれない。
踊り場ごとに休憩しないと動けない。
やっと屋上に着いても、ラジオ体操の「ジャンプ」が全くできない。
さらに平均台を渡る訓練では、一人では立っていられず、上司の肩を借りないと渡り切ることができませんでした。

上司から「それは流石におかしい。病院へ行け」と言われ、検査を重ねた結果、自分の病気が判明しました。
それは、アメリカで発見されたばかりの非常に珍しい進行性の病気でした。
全身の筋肉が少しずつ弱まっていく病気で、残念ながら今の医学では根本的な治療法がありません。
兄も同じ病気を抱えていて、すでに車椅子生活を送っています。
「自分もいつかはそうなるかもしれない」という恐怖と向き合いながら、障害者手帳を取得し、新しい働き方を模索し始めた時に出会ったのが、このライフワークでした。

2. 動画編集という「武器」を手に入れるまで

Katy

難病という大きな壁にぶつかった中、ライフワークでの「動画編集」はどのように映りましたか

Wさん

足が不自由な自分にとって、座ってできるデスクワークは必須条件でした。
ハローワークの窓口で「動画編集ができる事業所がある」と聞き、直感的に「面白そうだな」と思って体験に来ました。

実際にやってみると、これが自分にすごく合っていたんです。
パソコン操作にはもともと自信があったので、最初の研修動画は1日で終わらせてしまいました。
スタッフさんからも「もう次の練習案件に行きましょう」と言われるほどで(笑)。
「あ、これなら自分にもできそうだし、何より楽しい」と思えたのが、ここに入所を決めた最大の理由です。

Katy

この2年間で、スキル以外に変わったと感じる部分はありますか?

Wさん

「利用者同士の支え合い」ができるようになったことですね。
僕が入った頃は、何かあればすぐにスタッフさんに質問していましたが、今は僕自身が教える側に回ることも増えました。
メンバー同士で「このカット、どうすれば綺麗に見えるかな?」「プレミアプロのこの機能、どう使うんだっけ?」と教え合える。

僕はサポート役に回るのが好きなんです。
体験に来た方や、まだ体調が不安定なB型の利用者さんが困っている時「大丈夫ですよ」と声をかけられる。
そんなコミュニケーションを通して、少しずつ自分に自信がついていきました。

3. 「なりたい自分」との決別

Katy

Wさんは以前、ライフワークの「支援員(スタッフ)」を目指していた時期もあったそうですね。

Wさん

はい、本気で考えていました。
教えるのが好きだし、同じ悩みを持つ人を支えたいという思いがありました。
でも、ここで大きな挫折を味わうことになります。

きっかけは「引っ越し」と「冬の雪道」でした。
2025年に引っ越しをしました。以前はバス停が家の目の前だったんですけど、最寄駅までが遠くなったんです。
冬に駅までの雪道で何度も転倒してしまい、冬場の通勤が高いハードルだと痛感しました。
スタッフのひかるさんに「冬の間だけ在宅勤務にしたい」と相談したところ「支援員は事業所に出勤して対面で利用者さんを支援するのが基本。冬場は出勤できないので、在宅でオンラインで利用者さんを支援するというのは現実的には難しい」と、はっきり言われたんです。
以前の住まいのような通所に便利なところに引っ越すことも勧められましたが、引っ越しは考えられなくて。

Katy

その言葉を聞いた時、どう感じましたか?

Wさん

正直に言うと、その時は心が折れてしまいましたね。 「どうしようかな」と立ち止まりましたし、一時は「あぁ、もういいや」投げ出したくなるような気持ちもありました。でも、そこでずっと落ち込んでいるのではなく「支援員の道が一旦難しいなら、切り替えて就職を目指そう」と考えるようになったんです。

そこから「家でもできる仕事」を真剣に探し始め、今のフリーランスという選択肢にたどり着きました。

4. 授業料はフリーランスという夢への投資

Katy

フリーランスを目指すために、かなり大きな決断をされたとか。

Wさん

はい。
独学では限界があると感じ、それなりにまとまった金額の本格的な動画編集のオンライン講座に申し込みました。
分割払いですが、自分にとっては一生モノの大きな投資です。

この講座が結構、本格的で。
でも、ライフワークで基礎を叩き込んでいたおかげで、3ヶ月かかるはずのカリキュラムをわずか1ヶ月で終わらせてしまいました。
今はPhotoshopを使ったデザインや、案件を獲得するための「営業手法」を学んでいます。
ライフワークに通いながら、空いた時間で自分のスキルをプロレベルまで引き上げる。
今は毎日が修行のようです。

Katy

「営業」という言葉が出ましたが、自分で仕事を取りに行くことへの不安はありませんか?

Wさん

営業への不安はあんまりないんです。
今受けている講座はマンツーマンで営業の仕方も教えてくれますし「不安があったら何でも相談してくださいね」というサポート体制があるので心強いです。

受講料は高かったですが、無料相談でいろいろ話を聞いた時に「完全な未経験からでも月何十万と稼ぐフリーランスがどんどんいる」と知って。
だったら今、動画編集をしている自分なら「もうちょっといけるんじゃないか」と思えたんです。
しっかり勉強してスキルを身につければ、受講料もすぐに取り返せると思っています。

Katy

ご自身のスキルへの信頼と、前向きな姿勢が素晴らしいですね。

Wさん

ありがとうございます。
ただ、完全にフリーランス一本で安定した収入ができるまでは時間がかかると思うので、まずはその「つなぎ」としてアルバイトを探しています。
在宅や冬場の配慮を相談できるところを探して、午前中に企業の面接を受け、午後からライフワークに来るという日々ですね。
今は面接練習会でもガチガチに緊張しちゃってますけど(笑)
自分なりのペースで進めていきたいです。

5. ライフワークで得た「一生の仲間」

Katy

ライフワークでの一番の思い出を教えてください。

Wさん

一つに絞るのは難しいですが、やっぱり一昨年のハロウィンで、何人かのメンバーがガッツリとメイクをして仮装したことですね。事業所の中が、いつもと違うワクワクした空気に包まれていました。
ライフワークは個性が尊重される場所で、自由な雰囲気が大好きです。

あとは、プライベートでの繋がりですね。悩んでいるメンバーとカフェで何時間もお喋りしたり。
事業所という枠を超えて他の利用者さんと「一人の人間」として向き合える仲間になれたことは、僕にとって何よりの財産です。

6. これから歩む仲間たちへ。Wさんからのエール

Katy

最後に、今ライフワークで頑張っている仲間や、これから通所を考えている方へメッセージをお願いします。

Wさん

まず伝えたいのは、「自分の体調を一番大切にしてほしい」ということです。
僕も難病という避けられない現実がありますが、まずは朝起きて、ご飯を食べて、ここに来る。それだけで自分を褒めていいと思うんです。

ライフワークには、親身になって相談に乗ってくれるスタッフさんがいます。
自分の「やりたいこと」と「できること」のギャップに苦しむこともあるかもしれませんが、焦らずに。
僕も支援員という夢は諦めましたが、そのおかげで「フリーランス」という新しい、より自分に合った道を見つけることができました。

自分の弱さを認めることは、負けじゃありません。
それが「自分らしい働き方」への第一歩になります。

僕もこれから、一人のプロとして社会に出ていきます。
皆さんも、自分のペースで、最高の一歩を踏み出してください!