上手に話せなくてOK!「愛されるコミュニケーション」のヒミツ

就労支援の事業所や職場、あるいは日常の人間関係の中で、コミュニケーションに対してこんなプレッシャーを感じていませんか?

「なにか面白いことを言わなきゃいけないんじゃないか」
「スラスラとよどみなく、上手に話さなきゃいけない」
「会話が途切れて、沈黙になったらどうしよう……」

私たちはどうしても、「コミュニケーション=話すこと」だと思い込んでしまいがちです。
大観衆の前でiPhoneのプレゼンテーションをするスティーブ・ジョブズや、テレビで流暢にしゃべるアナウンサー、あるいはTEDトークの登壇者のような「スキル」を想像してしまいます。

しかし、私たちが本当に求めているのは、そんな大舞台でのスピーチスキルではありません。
すぐそばにいる身近な人たちとギスギスせずに、穏やかな関係を築くことのはずです。

実は、世の中の「コミュニケーション強者」と呼ばれる人たちが大切にしているのは、流暢なトークスキルではなく「メンタルと環境作り」なのです。

私たちが勘違いしている「思い込み」は、会話の100%を話すことに使い、気の利いたことで相手を笑わせようと常に緊張している状態です。

しかし、コミュニケーションの本当の姿は「9割が聞くこと」です
なぜなら、人間の最も根源的な欲求は「お金が欲しい」でも「モテたい」でもなく、「安全でありたいという欲求」だからです。

人は常に「拒絶されたらどうしよう」という不安に苛まれています。
どれだけ最高級の美味しいフォアグラを出されても、マフィアに銃を突きつけられながらでは全く味がしないのと同じです。
相手が「ここは安全だ」と感じていなければ、どんなに素晴らしいトークも相手の心には届きません。

会話は「温かいキャッチボール」です。
必死に面白いことを言おうとするのは、相手に向かって160キロの豪速球を全力で投げ込んでいるようなもの。
受け取る側も、そして投げる側も疲弊してしまいます。
みんなが探しているのは、豪腕ピッチャーではなく、ただ優しくボールを受け止めてくれる「上手なキャッチャー」なのです。

では、相手に「ここは安全ですよ」と伝え、安心のミットを作るにはどうすればいいのでしょうか。
特別な才能は一切不要な「3つの魔法」をご紹介します。

魔法の鍵①:笑顔の先出し(「ここは安全ですよ」の青信号)

1つ目は「笑顔の先出し」です。

あるデータによると、人が仕事を失う最大の理由は「能力不足」ではなく「人間関係(人望のなさ)」だと言われています。
それくらい、人に安心感を与えることは重要です。

笑顔は、面白いことがあったから笑うのではなく、相手の不安を取り除くために「自分から先に微笑む」ことが大切です。

これはスポーツの練習と同じです。
「甲子園に行きたい!」と言いながら「バットが重いから素振りはしたくない」と言っている人がいたら、絶対に甲子園には行けませんよね。
プロのゴルファーもダンサーも練習をするように、「微笑み」も最初からできるものではなく、意識して先出しする習慣(練習)が必要です。

あなたの先出しの笑顔が、不安を抱える相手にとって「ここは安全ですよ」という青信号になります。

魔法の鍵②:うなずき(「あなたを受け入れています」という最強のサイン)

2つ目は「うなずき」です。

誰かの話を聞くとき「すごいですね!」「さすがですね!」と言葉でペラペラと称賛するよりも、実はただ首を縦に振って「感嘆」する方がずっと相手の心に響きます。

食レポの新人アナウンサーが、ガチガチに緊張した顔で「外はサクサクで中はフワフワで…」と理路整然と語るより、一口食べて顔をほころばせ「ん〜っ!」と全身で美味しさを表現する方が見ている側には伝わりますよね。

会話も同じです。
相手の話をジャッジしたり、ひろゆきさんのように「それってあなたの感想ですよね」と論破したりしてはいけません。
論理的思考力ではなく、ただ受け入れることが信頼に繋がります。

うなずきは、相手の感情のピークに合わせて「弱・中・強」のダイヤルを使い分けましょう。

  • 弱(小さなうなずき): 「聞いてるよ」というサイン。
  • 中(文末でのうなずき): 「なるほど、わかるよ」という共感。
  • 強(感情のピーク): 「本当に!?」「すごいね!」と全身で驚く。

もし相手が仕事でミスをして弱っているときは、「大丈夫ですか!?」と慌てて聞いたり、謎のアドバイスをしたりするのではなく、ただ優しくうなずきながら「大丈夫だよ」と全肯定してあげてください。それだけで、相手は救われます。

魔法の鍵③:相手の名前を呼ぶ(全人類が一番好きな言葉)

3つ目は「相手の名前を呼ぶ」ことです。

全人類が、人生で一番強烈に興味を持っているもの。それは「自分自身」です。そして、人間にとって一番心地よくて、一生のうちに最も多く触れ合う言葉は「自分の名前」です。

あなたが自分の大好きな食べ物(例えばフルーツタルトや餃子)の話をされるよりも、自分が心から尊敬している人から「〇〇さん」と名前を呼ばれる方が、ずっと嬉しくて感動しませんか?

特別な言葉を探す必要はありません。いつもの挨拶や言葉のトッピングとして、名前をプラスするだけでいいのです。

  • 「おはようございます」 → 「佐藤さん、おはようございます」
  • 「わかりました」 → 「わかりました、佐藤さん
  • 「ありがとうございます」 → 「佐藤さん、ありがとうございます」

たったこれだけで相手は「自分のことを大切にしてくれている」と強烈に感じます。

無理にがんばらなくていい。心に余裕を持って。

コミュニケーションにおいて一番やってはいけないのは、相手を否定すること、負け惜しみを言うこと、そして弱っている人に謎のアドバイスをしてしまうことです。

上手に話そうと無理にがんばる必要はありません。

まずは自分の心と身体に少しの「ゆとり」を持ち、目の前の人を全肯定する環境を作ること。身近な人に笑顔を向け、深くうなずき、名前を呼んであげること。

たったそれだけで、あなたは周りから「この人とずっと話していたい」と思われる、最高のキャッチャーになれます。
明日から、どれか一つだけでも、ぜひ試してみてくださいね。