【PTSD・トラウマ解説】なぜ心と体は「誤作動」を起こすのか?自分を責めないためのサバイバルガイド

こんにちは。Katyです。

「過去の辛い出来事が、今も自分を苦しめている」
「急に体が動かなくなるのはなぜ?」

就労継続支援事業所ライフワークでは、そんな悩みを抱える皆さんが少しでも自分を肯定できるよう、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と神経の仕組みについて学ぶ機会を大切にしています。

今回は、私たちの命を守る「アラーム」の仕組みを詳しく解説します。

目次

なぜ、心と体の仕組みを学ぶのか

「なぜ急に怒りが止まらないのか?」
「なぜ大事な場面で体が固まってしまうのか?」

そんな疑問を抱えることはありませんか。これは決してあなたの性格や根性が原因ではありません。
実は、あなたの体を守る「神経の仕組み」が必死に働いている結果なのです。
この仕組みを正しく知ることで、自分を責めるのをやめ、ライフワークという場所をより安心できる空間に変えていく第一歩になります。

PTSDという「鳴り止まないアラーム」

そもそもPTSDとは何でしょうか。
これを「火災報知器(アラーム)」に例えて考えてみましょう。
本来、アラームは火事の時だけ鳴るものです。

しかしトラウマを抱えた状態とは、過去の圧倒的な恐怖が体に記憶され、「今はもう火事ではないのに、アラームだけが鳴り続けている状態」を指します。
心が壊れたのではなく、身を守るためのスイッチがONのまま固定され、今も「まだ危険だ!」と体が誤作動を起こしているのです。

私たちに備わる「3つのサバイバルモード」

このアラームの仕組みを理解する上で役立つのが「ポリヴェーガル理論」です。
私たちの自律神経には、自動的に切り替わって命を守る「3つのサバイバルモード」が備わっています。
これはあなたの意志とは関係なく、周囲の環境を察知して無意識に作動するものです。

心と体の状態を知らせる「ダッシュボード」のランプが、状況に合わせて目まぐるしく切り替わっているイメージです。

グリーンモード:安心とつながりの状態

1つ目のモードは【グリーンモード(安心・つながり)】です。

腹側迷走神経が働き、心が穏やかでリラックスしている状態を指します。
このモードにいる時、私たちは相手の目を見て穏やかに話し、呼吸も深くゆったりとします。人の話を落ち着いて聴いたり、新しいことを学んだり、他者と温かく交流できるのはこの状態のおかげです。

ライフワークで私たちが最も大切にしたいのは、このグリーンモードで過ごせる時間です。

オレンジモード:戦うか逃げるかの状態

2つ目は【オレンジモード(戦うか、逃げるか)】です。

交感神経が優位になり、危険に立ち向かうためにアクセルが全開になる状態です。
心拍数が跳ね上がり、呼吸は浅く速くなり、筋肉はいつでも動けるように極度に緊張します。

このモードでは視野が狭くなり、周囲の些細なことに過敏に反応してしまいます。
急なイライラやパニック、ソワソワして落ち着かない感覚は、あなたの体が必死に「戦うか逃げるか」の準備をしている証拠です。

ブルーモード:凍りつき・シャットダウンの状態

3つ目は【ブルーモード(凍りつき・シャットダウン)】です。

背側迷走神経が働き、危険が大きすぎて「戦うことも逃げることもできない」と判断した時に発動する、命を守るための最終手段です。
頭にモヤがかかったようになり、体の感覚が麻痺し、感情がからっぽになります。
布団から一歩も出られなくなるのは、神経が「死んだふりをしてエネルギーを温存し、やり過ごせ!」という急ブレーキをかけた結果なのです。

トラウマが「体」に残る理由

では、なぜこの「凍りつき」のエネルギーは体の中に残り続けてしまうのでしょうか。
野生動物は、危険を脱した後に体を激しく震わせて余まったエネルギーを逃がしますが、人間は社会的な制約などからそれを体の中に閉じ込めてしまいがちです。
逃げるための「アクセル(交感神経)」と、身を守るための「急ブレーキ(背側迷走神経)」を同時に踏み込んだ状態のまま、膨大なエネルギーが神経系に固着してしまう……これがトラウマの正体です。

トラウマを抱えた神経系は、心と体の「ダッシュボード」を柔軟に動かせなくなります。
健康な神経系であれば、危険が去ると自然にグリーンモードへ戻れます。
しかしPTSDの状態では、過覚醒の「オレンジゾーン」や、シャットダウンの「ブルーゾーン」のどちらかに針が固定されてしまい、そこを行ったり来たりするばかりで、なかなか安心できるグリーンゾーンに戻れなくなってしまうのです。

PTSD特有の辛い症状も、この「モードの誤作動」として理解できます。
トラウマが今起きているように感じるフラッシュバックや不眠は「オレンジモード(過覚醒)」の現れです。
一方で、人や場所を避ける回避行動、現実感がなくなる解離、体が重くて動けない状態などは「ブルーモード(シャットダウン)」によるものです。
これらは「変な症状」ではなく、神経系があなたを守るために必死に機能した結果なのです。

あなたは弱くない、一歩を踏み出す「サバイバー」

ここで強くお伝えしたいのは、トラウマ反応は「弱さ」ではないということです。
「なぜあの時、戦えなかったのか」「なぜ自分だけこんなに臆病なのか」と自分を責める必要はありません。
あなたの神経系は、あの過酷な状況を生き延びるために「最も正しい選択」をして、あなたを今日まで守り抜きました。
トラウマの症状は、あなたが困難を生き抜いた「サバイバー(生存者)」である証なのです。

体から「安心」を取り戻すセルフケア

フリーズした神経系をグリーンモードへ戻すには、頭で考えすぎるよりも「体からアプローチ(ボトムアップ)」するのが効果的です。

冷たい水に触れる、温かい飲み物をゆっくり味わう(触覚)
ハミングやうがいで喉を震わせる(音)
足の裏が床に着いている感覚を確かめながら息を吐く(動き)
部屋の安全なものを3つ探す(五感)

こうした小さな「今、ここ」の感覚を繰り返すことが、脳へ「今はもう安全だよ」という信号を送り届けます。

みんなで安心できる場所を作るために

ライフワークでお互いを支え合うために「避けた方がいいこと」も知っておきましょう。
相手が混乱(オレンジ)したり、固まって(ブルー)いる時、無理に理由を問い詰めたり、トラウマの内容を聞き出そうとするのは逆効果です。
また「元気を出して」という励ましがプレッシャーになることもあります。
相手が急に怒り出したり無視したりしても、それはその人の性格ではなく「神経のモード」のせいです。
個人的に受け取って傷つかないことも大切です。

逆に、私たちにできる最大のサポートは「共に調整する(コーレギュレーション)」ことです。
人は、安心している人と一緒にいるだけで、自分の神経も安心を思い出すことができます。
無理に言葉をかけずとも、ただ穏やかに同じ空間にいるだけで十分な支えになります。
相手のペースを尊重し、一人になりたそうな時はそっと見守る。
そんな「安全な距離感」が、お互いのグリーンモードを育む土壌になります。

私たちは誰もが、自分だけのアラームのスイッチを持っています。
お互いに「今はブルーモードなんだな」「今は少し休憩が必要だね」と認め合えること。
それが、このライフワークという場所を本当の意味で「安全な居場所」にしていきます。
自分と相手の「体のアラーム」に優しく耳を傾けながら、少しずつ一緒に安心できる時間を増やしていきませんか。

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