こんにちは。就労継続支援ライフワークのKatyです。
前編では、うつ病が「気持ちの弱さ」ではないことや、脳のエネルギー不足・血糖値の波が心に与える影響についてお話ししました。
(※まだ読んでいない方は、ぜひ前編からチェックしてみてくださいね!)

後編では、じゃあ実際にどうやって自分を守り、回復を目指していけばいいのか? という具体的なアイデアや、ライフワークの仲間同士で温かく支え合うための工夫についてお話ししていきます。
私たちが目指すゴールは「完治」ではない

心の病気と向き合う時、「いつになったら元通りの元気な自分に完治するんだろう」と、焦る気持ちが出てくるのは当然のことです。
しかし、精神疾患の回復において、私たちが目指すべき本当のゴールは、実は「完治」ではなく「寛解(かんかい)」や「部分寛解」と言われています。
なぜ、あえて「完治」という言葉を使わないのでしょうか?
精神疾患は、体調や環境の変化によって再発するリスクがあり、症状が完全に24時間365日ゼロになる、という状態を定義するのがとても難しい病気だからです。
そのため、「完治」にこだわると少しの体調悪化で絶望してしまいます。
その代わりに、私たちは「症状と上手に付き合いながら、日常生活に支障がない状態」を目指していきます。
- 寛解(かんかい)とは?
病気の症状がほぼ消え去り、日常生活や作業所の通所などを、以前と同じように安定して送れるようになった状態を指します。
ただし、再発をしっかりと予防するために、調子が良くても通院や服薬をきちんと継続することが不可欠です。 - 部分寛解(ぶぶんかんかい)とは?
まだいくつかの症状は残っており、日によって波はあるものの、一番辛かった時期に比べると明らかに軽くなっている状態です。
日常生活は送れますが、まだ少し不安定な時期でもあります。
ここから焦らず、さらに安定した「寛解」のステップを目指していきます。
「完全にうつをゼロ」にできなくても大丈夫。
今の自分の状態を受け入れ、付き合っていくことが大切です。
回復のカタチは「3歩進んで、2歩下がる」

多くの人は、回復のプロセスを「右肩上がりの一直線」として想像しがちです。
昨日より今日、今日より明日の方が良くなるに違いない、と。
しかし、実際のうつ病の回復曲線は、ギザギザの波を描きます。
「あ、最近調子が良いかも!」と思った翌日に、急にガクッと起き上がれなくなるほど体調が悪くなる。
これを何度も、何度も繰り返しながら長い長い目で見た時に、少しずつ全体のベースが上に登っているというのが「普通」の回復のカタチなのです。
ですから、「昨日より体調が悪い」「先週より動けない」と、その日その日の結果だけで一喜一憂して落ち込む必要はまったくありません。 2歩下がってしまっても、また調子が良い時に3歩進めば、結果として1歩前に進んでいます。 数ヶ月前、あるいは1年前の暗闇の中にいた自分と比べてみてください。「あの時よりは、少しマシになっているな」「笑顔になれる日が増えたな」と思えたら、あなたは確実に、今回復の階段を登っています。
自分を守る解決策①:バッテリーのやりくり上手になる

では、私たちがライフワークでの作業や日々の生活の中で、自分の「根っこ」をいたわりながら過ごすためには、どうすれば良いのでしょうか?
一番の特効薬は「エネルギーの無駄遣い」を徹底的にしないことです。
特に真面目な人ほど、少し調子が良い日があると、嬉しくなって100%の力を出し切って頑張ってしまいがちです。
しかし、弱っているバッテリーで100%の無理をしてしまうと、翌日には残量が0%に激減し、そこから元の状態に回復するまでに何日も無駄な時間がかかってしまいます。
今日から心がけたいのは、腹八分目ならぬ「頑張り八分目」の精神です。
- 「できること」を「できる範囲」で、淡々と行う。
- 「あ、ちょっと疲れたかも」と自覚する前に、先回りして休憩を入れる。
- どんなに調子が良くて「もっと作業ができそう!」と思う日でも、あえて余力をしっかりと残した状態で作業を切り上げ、笑顔で家に帰る。
エネルギーを上手にやりくりして、翌日に疲れを繰り越さない習慣を身につけましょう。
自分を守る解決策②:波を穏やかにする「3つの小さな習慣」

さらに、体と心の「お天気」を少しでも安定させるために、今日から日常生活に組み込める、本当に小さくて具体的な習慣を3つご紹介します。
① 朝散歩(あささんぽ)
朝起きてから1時間以内に、15分ほど外の新鮮な空気を吸いながら歩くか、それが難しければベランダや窓際で太陽の光を浴びましょう。
日光を浴びることで、先ほどお話しした安心の物質「セロトニン」が脳内でドバッと作られます。これが日中の心の安定を生み出し、さらに夜の深い睡眠のスイッチをオンにしてくれます。
(どうしても起き上がれない無理な日は、カーテンを開けて布団の中で日向ぼっこするだけでも100点満点です!)
② 睡眠を削らない
睡眠は、傷ついた「脳の回復時間」そのものです。
夜遅くまでスマートフォンを見続けたり、ゲームに熱中したりして睡眠時間を削ってしまうのは、脳の修復工場を無理やり夜間休業させるようなものです。
夜のスマホはほどほどにして、脳をしっかりと休ませてあげる時間を最優先で確保しましょう。
③ 食事は「野菜」から(ベジファースト)
先ほどの「血糖値のジェットコースター」を防ぐための強力な対策です。
お腹が空いている時にいきなり白米やパン、麺類などの糖質を口にするのではなく、まずはサラダやスープなどの「野菜」や、お肉・お豆腐などの「タンパク質」を先に食べる(ベジファースト)ことを徹底しましょう。
これだけで、食物繊維がクッションの役割を果たし、糖分の吸収が緩やかになって、食後の気分の乱高下を驚くほど防ぐことができます。
仲間を支え合う解決策:みんなで「ガス抜き」を手伝おう

最後に、ライフワークという素晴らしい環境で、共に過ごす仲間同士がどのように支え合っていけば良いかについて考えます。
もし、あなたの隣にいる大切な仲間が落ち込んでいたり、辛そうにしていたりする時、私たちができる一番の素晴らしいサポートは何だと思いますか?
それは、的確な「アドバイス」をしてあげることではありません。
相手の心に溜まった苦しい空気を抜いてあげる「ガス抜き」を手伝うことです。
具体的なガス抜きのサポート方法は、とてもシンプルです。
- ただ、うんうんと静かに話を聴く(解決策を提示しようとしなくて大丈夫です)。
- 「頑張れ」と言わない(相手はもう、死に物狂いで十分に頑張っています)。
- 「つらいんだね」「よく分かるよ」と、相手が吐き出したネガティブな感情を一切否定せずに、そのままの形で受け止める。
人間の悩みというものは、風船と同じです。
パンパンに膨らむ前に、小さいうちに誰かに言葉として吐き出す(ガス抜きをする)だけで、驚くほど心はスッと軽くなります。
お互いに、弱音を吐いても誰も責めない、「何でも安心して話せる安全な場所」を、このライフワークの中にみんなで一緒に作っていきたいですね。
まとめ:どんなお天気の日も、傘を分け合いながら

うつ病や心の不調は、風邪のように一朝一夕には治りません。 カラッと晴れ渡る日もあれば、突然の大雨や、一寸先も見えないような土砂降りの日もあります。
でも、こうして「脳のエネルギーが切れているんだな」「血糖値が揺れているんだな」という体の仕組みを知り、動けない自分を責めないこと。
そして、ライフワークの仲間とお互いの「雨(不調)」を理解し合い、認め合うことができれば必ず私たちは自分らしい心地よいペースで、前を向いて進んでいくことができます。
焦る必要はありません。
無理をする必要もありません。
お互いに小さな傘を分け合いながら、雨の日は一緒に雨宿りをしましょう。
この温かい場所で、一緒にゆっくりと、強くて優しい「根っこ」を育てていきましょうね。
